脊椎(胸椎・腰椎)とは?
脊椎とは、「せぼね」のことです。7つの頚椎と12個の胸椎、5個の腰椎、そして仙尾椎で構成されます。
胸椎は背中の胸部、腰椎は腰部を形成しており、体を支える柱として重要な役割を担うとともに、脊髄を保護しています。胸椎・腰椎の疾患では、背中や腰の痛み、下肢のしびれ、歩行障害などが現れることがあります。
当院では、整形外科専門医、脊椎脊髄外科専門医、脊椎脊髄外科指導医を保有している院長が、胸腰椎疾患の診断・治療を行います。
また、BKP(経皮的椎体形成術)、XLIF・OLIF(側方椎体間固定術)、MED(内視鏡下椎間板摘出術)、FESS(全内視鏡脊椎手術)などの先進的な脊椎手術にも対応しております。院長は専門の研修を修了し技術認定を受けており、技術指導医でもあります。どうぞ安心してご相談ください。
腰や背中の痛みなど症状は
ございませんか?
神経が圧迫されることで、手足などにも症状が現れます。

- 腰や背中の痛み、しびれ
- 脚の痛み、しびれ
- 筋力低下
- 歩行障害、長く歩けない
- 排尿障害
腰椎椎間板ヘルニア
5つの腰椎のあいだにありクッションの役割を担う「椎間板」が飛び出し、神経を圧迫する病気です。神経が圧迫されることで、腰や脚に痛みやしびれ、筋力低下などの症状が現れることがあります。
症状
神経が圧迫されることで、以下のような症状が現れます。症状はヘルニアの位置や圧迫の程度によって異なります。
- 腰、脚の強い痛み、しびれ
- 下肢の筋力低下
- 排尿障害
原因
加齢に伴う椎間板の変性、スポーツ・仕事による腰への負担が主な原因となります。また、遺伝的要因、喫煙などが発症リスクを高めると言われています。
治療方法
主に、以下のような治療を行います。
薬物治療
消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、湿布の外用などを行い、痛みの軽減を図ります。
リハビリテーション
筋力強化、筋肉・関節のストレッチといった運動療法、温熱・牽引などの物理療法を組み合わせたリハビリテーションを行います。
ブロック注射
局所麻酔、ステロイドを患部に注射し、痛みの連鎖を断ち切る治療です。
神経根ブロック
神経根に針を刺し、麻酔液・抗炎症薬を注射します。高い疼痛緩和の効果が得られます。
硬膜外ブロック
せぼね(脊椎)に針を刺し、硬膜の外側へと注射します。首~足の慢性的な痛みに有効です。
椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)
腰椎椎間板に、酵素を含んだヘルニコアという薬剤を注入します。椎間板の組成を変化させ、ヘルニアを改善することで、神経の圧迫が弱まります。
手術治療
保存療法で十分な効果が得られない、痛みなどの症状が強い場合には、以下のような手術を行うことがあります。
MED
MED(Micro Endoscopic Discectomy:内視鏡下椎間板摘出術)とは、内視鏡下でヘルニアを摘出する低侵襲手術です。スタンダードな術式であり、ほぼすべてのヘルニアや脊柱管狭窄症に対応が可能です。術後の痛みや感染リスクが少なく、回復が早いのが特徴です。
FESS
FESS(Full-Endoscopic Spine Surgery:全内視鏡脊椎手術、PED、FEDとも表記されることがあります)では、MEDよりもさらに低侵襲なアプローチで、内視鏡を用いてヘルニアを摘出します。水を還流し、視野を良好に保ちながら手術を行うことができます。適応となるヘルニアはやや限定されます。
腰部脊柱管狭窄症
加齢などを原因として、腰椎の中の神経の通り道である「脊柱管」が狭くなり、中を通る神経を圧迫する病気です。下肢に症状が現れます。
症状
主に、以下のような症状が見られます。
- 腰、脚の強い痛み、しびれ
- 下肢の筋力低下
- 歩行障害、間欠跛行(歩くと下肢のだるさで歩けなくなり、少し休憩するとまた歩ける)
- 排尿障害
原因
加齢に伴う椎間板・椎体の変性、靭帯の肥厚などが主な原因となります。
治療方法
主に、以下のような治療を行います。
薬物治療
非ステロイド系消炎鎮痛薬や血流改善薬の内服、湿布・塗り薬などの外用薬により、痛みの軽減を図ります。
リハビリテーション
ストレッチ、体幹を鍛えるトレーニング等のリハビリテーションを行っていきます。
ブロック注射
痛みが強い場合には、神経ブロック注射を行います。
硬膜外ブロック
せぼね(脊椎)に針を刺し、硬膜の外側へと、局所麻酔液を注射します。神経の圧迫に伴う痛み・しびれを改善する効果が期待できます。
神経根ブロック
脊髄神経に針を刺し、麻酔液・抗炎症薬を注射します。高い疼痛緩和の効果が得られます。
手術治療
当院では、腰部脊柱管狭窄症に対する以下のような手術にも対応しております。
MEL(内視鏡下椎弓切除術)
腰椎椎間板ヘルニアに対するMEDを応用した術式です。内視鏡下で椎弓・肥厚した黄色靭帯を切除することで、神経の圧迫を取り除きます。
部分椎弓切除術(開窓手術)
脊柱管の一部に窓を開けるようにして、術前の症状の程度から、部分的に椎弓を切除する手術です。
椎弓切除術
部分椎弓切除術に対して、広範囲に椎弓を切除する手術です。重度の脊柱管狭窄症、複数個所に及ぶ神経圧迫があるケースで選択されます
脊椎固定術(TLIF・PLIF、OLIF・XLIF)
金属製のスクリューやケージ(スペーサー)を用いて脊椎を安定化する固定術を行います。様々なアプローチ、固定の方法があります。各患者様に最適な手術方法を提案させていただきます。
成人脊柱変形
(側弯症、後弯症)
せぼね(脊椎)は本来、正面からみるとまっすぐ、側面から見ると頚椎は前弯(前方凸のカーブ)、胸椎は後弯、腰椎は前弯になっています。脊柱変形はこの正常なアライメントがくずれている状態です。
側弯症はせぼね(脊椎)が左右に曲がった状態を指し、後弯症はせぼね(脊椎)が後方凸に曲がる状態を指します。どちらも加齢性変化が原因になることが多く、腰や背中の痛み、姿勢の悪化、神経症状の原因になることがあります。
症状
症状は変形初期には現れにくく、進行してから気づくケースが少なくありません。
- 腰や背中の痛み
- 腰や背中の曲がり
- 下肢のしびれ、痛み
- 呼吸がしづらい
- 食事でつっかえる、量が食べられない
原因
成人では、加齢や椎間板・椎体の変性、圧迫骨折などにより側弯や後弯が進行し、症状を引き起こすことがあります。
治療方法
成人の脊柱変形では、側弯症や後弯症により腰や背中の痛み、姿勢の悪化、神経症状などが現れることがあります。治療は症状の程度や生活への影響を考慮して行われます。
薬物治療
消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などを用い、痛みやこりの軽減を目指します。
薬物治療は根本的な治療ではありませんが、日常生活での活動を楽にし、リハビリや運動療法に取り組みやすくするための重要なサポート手段となります。
リハビリテーション
背中や体幹の筋力を整え、姿勢改善や神経への負担軽減を図ります。ストレッチや柔軟性の向上により関節や筋肉の可動域を広げ、痛みの予防や進行抑制にもつながります。リハビリは単に症状を和らげるだけでなく、再発予防や日常生活動作の改善に効果的です。
手術(長範囲固定術)
症状が強く、保存療法で十分な改善が得られない場合には、脊柱を矯正して固定する手術を行います。
成人脊柱変形に対して代表的なのが「長範囲矯正固定術」です。この手術では、変形した脊柱を矯正し、スクリューやロッドなどの金属で脊椎を固定することで、姿勢の安定を図ります。
近年では、OLIF や XLIF といった低侵襲の前側方アプローチと、経皮的椎弓根スクリュー(PPS) を組み合わせることで、体への負担を抑えながら長範囲矯正固定術を行うことが可能になっています。
小児側弯症
小児の側弯症には、先天性側弯症・症候性側弯症・特発性側弯症の3つがあります。
- 先天性側弯症:生まれつき脊椎の形状に異常があり、側弯が生じるタイプです。
- 症候性側弯症:マルファン症候群や神経・筋疾患など、他の病気に伴って現れる側弯です。
- 特発性側弯症:もっとも多いタイプで、明らかな原因はなく、特に思春期の女児に多く見られます。
当院では、丁寧な診断をもとに、進行予防を目的とした装具治療を行っています。進行の程度によっては、手術が必要になることもありますが、その場合も専門医と連携しながら最適な治療を検討します。
お子さまやご家族の不安に寄り添い、無理なく続けられる治療環境を整えております。側弯症は早期の対応が大切ですので、気になる症状があれば安心してご相談ください。
症状
小児側弯症のほとんどは、外観の変形以外の症状はありません。変形が進行してきて指摘されることが多いです。
- 肩の高さが左右で違う
- 肩甲骨の高さ、出っ張りの程度が左右で違う
- ウエストラインの高さが左右で違う
- 前屈(前屈み)した時の背中の高さが左右で違う
原因
もっとも多い小児側弯症は、原因が特定できない特発性側弯症です。ただし、家族内発症が多いことなどから、遺伝的な要因の関与が考えられています。発症に関与する遺伝子の研究が進んでいます。
治療方法
小児側弯症の治療で最も大切なのは、定期的にレントゲン検査を行い、側弯が進行していないかを確認することです。小児の側弯症は多くの場合、痛みなどの症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。側弯が進行してきた場合には、装具療法による進行予防や、必要に応じて手術療法を検討していきます。早期からきちんと経過観察をしていくことで、より安全で効果的な治療につながります。
定期的なレントゲンでのフォロー
小児脊柱側弯症は、身長が大きく伸びる時期に進行しやすいのが特徴です。
そのため、成長期には定期的にレントゲン検査を行い、経過を注意深く観察することが大切です。
当院では、数か月ごとにレントゲン検査を行い、側弯の程度を確認しながら、お子さまの成長に合わせて治療方針を適切に調整していきます。
装具治療(OMC装具・SN装具)
装具治療は、成長期における側弯症の進行を抑えるために行われる代表的な治療法です。また、装具治療は小児側弯症に対する、医学的根拠のある唯一の保存治療法です。
OMC装具
OMC装具は、主弯曲カーブと反対側に腋下パッドを取り付けることで、胸腰椎の側弯を矯正するタイプの装具です。せぼね(脊椎)のバランスを改善し、日常生活を送りながら側弯の進行を抑える効果が期待されます。装着時間は原則として終日(24時間)が推奨されますが、生活習慣や症状の程度に合わせて調整されることもあります。特に、進行性の側弯症に対して有効であり、成長期の治療において重要な役割を担います。
SN装具
SN装具は、夜間のみ使用することを前提に開発された装具です。昼間は装具を外して生活できるため、学校生活や運動への影響が少ないのが大きな利点です。
装着時間は短いですが、装着時の側弯矯正力は24時間装具と同等かそれ以上で、十分な効果が期待できます。
装具をつけて登校することに抵抗があるお子さまや、日中の活動を重視したいご家庭にとって、無理なく続けられる治療の選択肢となります。
リハビリテーション
リハビリテーションは、背中や体幹の筋力を整えることで、姿勢を保持や症状の軽減、進行の予防を目指す方法です。脊柱の側弯を直接矯正することはできませんが、筋肉のバランスを改善することでせぼね(脊椎)への負担を軽減し、呼吸機能や運動機能の維持にも役立ちます。
手術治療
装具療法や保存療法で十分な効果が得られない場合に、脊柱を矯正・固定させる手術を行います。手術ではスクリューやロッドを用いて脊柱を矯正・固定し、変形を矯正し姿勢を安定させます。
脊椎圧迫骨折
せぼね(脊椎)が押しつぶされるようにして起こる骨折です。高齢者、骨粗鬆症の方によく見られます。
症状
主に、以下のような症状が見られます。
- 腰、背中の激しい痛み
- 前屈みの姿勢、持ち上げる動作で痛みが悪化する
- 背中が曲がる、身長が低くなる
原因
転倒などによってせぼね(脊椎)に大きな負担がかかることが主な原因となります。特に骨粗鬆症の方は、気づかないうちに脊椎圧迫骨折を起こしていることもあります。またその他、骨の腫瘍によって骨がもろくなり、軽い衝撃で圧迫骨折に至るということもあります。
治療方法
診断後は、以下のような治療を行います。痛みが強い場合には、痛み止めを処方します。
また骨粗鬆症が背景にある場合には、その治療も必要になります。
コルセットによる固定(硬性コルセット、軟性コルセット)
コルセットによりせぼね(脊椎)を固定し、安静を保ち、治癒を促進します。
リハビリテーション
骨折部が安定すれば、筋力強化、姿勢改善、転倒防止などを目的としたリハビリテーションを行います。
手術治療
当院では、BKP(経皮的椎体形成術)、低侵襲脊椎固定術などの手術にも対応しています。
BKP(経皮的椎体形成術)
潰れてしまった椎体を、バルーンや骨セメントを使って骨折前の状態に近づくように形成します。手術後は早期の痛みの軽減が期待できます。
低侵襲脊椎固定術
不安定な椎体の上下を、スクリューやロッドで固定する手術です。BKPに併用することもあります。経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いることで、小皮切で低侵襲に固定術を行うことが可能です。
腰椎変形すべり症
加齢に伴う腰椎や周辺組織の変性によって、腰椎がすべるようにズレた状態です。神経の圧迫、腰の安定性低下などが引き起こされます。
症状
以下のような症状が続く場合、お早目にご相談ください。
- 腰の鈍い痛み
- 立ちっぱなし、歩行で痛みが悪化する
- 太もものなど下肢のしびれ、不快感
- 腰が固まったような不快感
- 歩行時に足がスムーズに出ない
原因
加齢による腰椎、腰椎を支える筋肉・靭帯・椎間板などの変性が主な原因と言われています。また女性の場合は、更年期の女性ホルモンの急激な減少も、腰椎変性すべり症の発症に影響するものと思われます。
治療方法
安静、薬物療法、物理療法などで痛みの軽減を図ります。必要に応じて、腰椎コルセットを用いた装具療法を行います。また痛みが強い場合には、ブロック注射を行うことがあります。
痛みが落ち着いてからは、筋力・柔軟性の強化、姿勢改善、再発防止を目指したリハビリテーションを行います。
これらの保存療法で十分な効果が得られない、症状が強く日常生活に支障が出ているといった場合には、腰椎固定術などの手術を検討します。





